司法試験論文の学問的ポイント
まず、司法試験論文が求めていることは、現実にありそうな取引や事件に関して、民法、刑法といった法律を使って、一定の法的結論を出すことです。このような取引があったとしてAとBのどちらの言い分が通りますか(exどちらに所有権があると認められますか)、このような事件があったとしてCの行為に詐欺罪が成立しますか、といった一定の法的問題に結論を出すのです。それには、状況ごとに適用される法律が何であるのか、適用される法律の要件と効果はどのようなものか(条文の要件と効果の解釈が必要になります)、本件の事実が要件を満たすのか(事実認定と当てはめ)を認定する必要があるのです。
適用する条文は何かというのは、これは法律への一定の理解が必要ですが、これは、法律を学んでいけば分かってくると思います。
法的解釈は、基本的には、判例の通りに理解すればよいのみです。してがって、ここは忍耐強く理解と暗記を重ねていけばいいのであってそこまで難しいものではありません。
事実認定と当てはめにも明確なやり方はあります。この要件では、このような事実を拾って、このような視点でその事実の意味を評価していくというやり方は、判例や学者本等ある程度実務を踏まえた書籍を学んでいけば分かってくるものではあります。しかし、事実認定と当てはめに関してきちんと教えてくれる予備校はあまりありませんし、事実認定や当てはめを定式化して教えてくれる教材はほとんどないと思います。したがって、受験生は、事実認定と当てはめにおいて、どうすればいいのかと途方に暮れることが考えられます。
司法試験論文の試験的ポイント
上記とは別に、司法試験がまさに試験であることから考えるべきことがあります。
司法試験論文には、明確な正解の答案があります。そうでないと、論文試験に点数をつけるということはできません。このような事柄が考慮されていれば何点といった点数表がありそれにしたがって点数がつけられているのです。問題文でもあからさまな誘導があり、書くべき方向性は決まっています。そうでないと全員を同じ土俵では判定できないからです。その中で自分に法的知識と法的判断能力があることを試験官に証明するという仕組みとなっています。
それでは、正解答案があるとして、どのようなことが重要となるのでしょうか。それは、問題文に向き合ったときに、条文適用、条文解釈、当てはめにおいて厚く書くことが求められているのはどこかを考えて、書くべき事柄や内容を合格答案に近づけることが大事であり、その意識がないと法的な知識や判断力があるにも関わらず、試験に合格しないという結果となることが十分にあり得ることです。司法試験では、出題者の作成した正解に近づけるという意識が極めて重要となるのです。
司法試験論文との関係で判例をどのように学ぶべきか
法律を学ぶ上で判例は当然重要です。実務は判例に従い運用されており、条文の適用、条文の解釈、事実認定・当てはめの全ては判例の影響下にあります。もっとも、判例は、法律の適用過程を当然踏まえてはいますが、全てをごっちゃに表現するように見えることもあります。裁判官にとって法律の正しい適用過程はあまりに当然のことだからなのか、明確な先例を残すよりも解釈の余地を残したほうが実務上いいのか、そのあたりはよく分かりませんが、とにかく判例は今どこの話をしているのかよく分からないときが多々あります。司法試験との関係で判例を学ぶときに重要なのは、答案のどの部分の話なのかという視点を持ちながら判例を学ぶことです。司法試験は、法的に意味の通った論文として書くことが必要です。司法試験論文では、法律の適用過程の中での講学上の位置付けを明確にしながら判例の考え方を示すことが重要なのです。司法試験論文では、判例のこの考え方は講学上のどの部分の話か自分なりに言語化して理解しておかないと、試験では使えない知識となってしまいます。したがって、司法試験との関係では、講学上の位置付けを明確にしながら、必要な範囲で判例を理解、暗記することが必要です。
最高の教材はやはり過去問だが、網羅的問題集も必要
条文選択、法律の解釈、事実認定及び当てはめ、司法試験の出題者の正解に合わせることの重要性、司法試験との関係で判例を学ぶ難しさ等色々なことを書きました。しかし、これらの難しさを克服する最高の教材があり、それはやはり過去問です。過去問には、前述の難しさが全て詰まっており、どのようにその難しさを克服すればいいのかも優秀答案・模範答案を読めば分かってきます。また、どのレベルまでの理解が必要なのか、この法的議論は講学上のどこの話なのかということも良質な答案例を読めば分かってきます。
しかし、過去問は最高の教材ですが、難点もあります。それは、難易度が高く、ここから始めるのは辛いこと、さらに過去問はその分野に必要な理解のレベルを少し超えたことを聞いてきてそこは自由演技してくれというような部分があり、その部分を除いた問題のほうが重要な基本を学ぶのが上手くいく場合があることです。また、過去問には出題されていない重要論点も少ないながらあります。
これらから、私が一番いいと思った勉強法は、過去問より難易度が低いが網羅性があり司法試験の傾向をきちんと反映している良質な網羅的問題集を解き続けるという勉強でした。私は、様々な予備校教材を使用してきましたが、その中で一番自分のレベルが上がっていると確信できたのは、質のいい網羅的問題集を解いているときであり、判例も判例集を読むのではなく問題集に出てきた範囲で理解し、気になった部分のみ判例集を読むようにしました。問題集を解くのが法律の理解をする上で最もいい方法であり、それ以外の方法は正直回り道だと感じました。これは、多くの受験生がそうなのではないかと思っています。
まとめ
結論として、司法試験論文の最高の勉強法は、過去問と司法試験の傾向を反映している良質な網羅的問題集を解き続けることです。
非常に身も蓋もない結論ですが、これが結論です。このブログでも自分なりの問題を作成して解答を公開していきたいと思っています。出来るだけ、司法試験論文を解くためのエッセンスの詰まった問題を作成し、司法試験論文を解くための力がつく解答を作成したいと思っています。
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